2009年11月2日月曜日

東京都葛西臨海水族園で見たアクリル樹脂製のドーナツ型水槽


傷には弱いアクリル




 マグロの泳ぐ大きな水槽は、アクリル樹脂板を何枚も貼り合わせたもので、ガラスよりも丈夫で加工がし易く、かつ安全であるため、今日の大型水槽には欠かせなくなっている。

 ここの水槽は大手の他社製だが、大型のアクリル樹脂製の水槽を作る技術で世界的に高い評価を受けている日本の中小企業に、香川県にある日プラという会社がある。

 この会社は日本では無名の中小企業であったために、大型水槽の受注が中々出来ないでいた。そんな時にアメリカのモントレー・ベイ水族館の大型水槽の受注に成功し、その後一躍その高い技術が世界に知れ渡るようになった。

 この時、水族館側はコンペに参加した数社からアクリル板を提出させ、強度実験をして最終的に日プラに決めている。その時の採用基準は、どこの国とか、一流会社とか、賄賂とか、コネとかではなく、純粋にアクリル樹脂の強度や水槽の安全性で決めている。

 その辺りが、日本の場合には難しい面があると言われている。先ず一流企業ではなく、経験がなかったり浅かったりすると、安心感が無いやら何かがあった時の保証の点などで、知名度のない中小企業の新しい技術とかには二の足を踏んでしまう事になる。

 しかしその様な事では中小企業の技術開発は進歩しないし、自立して行く事も出来ない。結局は大企業の下請けをするだけになってしまい、その大企業が本社や工場を海外に移転すれば一緒に付いて行かざるを得なくなってしまう。あるいは親企業から回って来る仕事が減れば、縮小するか工場をたたむしかなくなってしまう。

 だから日本の一流企業やこの社会が、中小企業の独創的な高い技術力を認める様な風土が無いと、下からのボトムアップは起きて来ない。

 もしこのまま日本の国が何の手も打たなかったら、グローバルな大企業は海外へとその軸足を移して行かざるを得なくなって来るだろう。そうなると雇用問題は益々深刻化を深めて行く事になる。

 そして遂には海外へ出稼ぎに行くという事態にならざるを得なくなる。日本の若者が中国へ、ブラジルへ、インドへと働きに行く時代が近い将来にやって来るかも知れない。