2009年12月8日火曜日

踏切事故と安全対策について(秩父鉄道の例で考える)

 

■ 事故の状況

 6日の1時30分に投稿したブログ記事に、志賀直哉の短編小説「正義派」の概要として、五つくらいの子供が路面電車によって轢死したという内容を載せた丁度その頃、埼玉県北部を走る秩父鉄道の、行田市駅と東行田駅間の警報機と遮断機がなくて、車の通れない踏切近くの線路上で遊んでいた4歳の男の子が、行田市駅方面から来た3両編成の電車に轢かれて亡くなった。

 ニュース報道によると、電車が好きだった男の子は、日曜日で両親が昼食の準備をしている隙を縫って、一人で100メートル程離れた線路まで行き、事故に遭遇してしまったという。
 運転手は事故現場の約100メートル手前で子供がしゃがみこんでいるのに気付き、警笛を鳴らし、急ブレーキを踏んだが間に合わなかったという事の様である。

 また偶然にも私はその何日か前に、熊谷駅から羽入駅まで乗り、事故現場を通っていた。さらには、先頭車両の一番前に張り付くようにして、学校を卒業して間も無いといった感じの若い女性運転手の運転動作や速度計や前方の景色をずっと観察したり、眺めたりしていたのだった。

 そんな事もあってか、何かどこかで他人事ではない様なものを感じ、その幼い男の子の死が何かしら教訓的なものを残し、今後の事故防止の役に立つ事はないかという意識もあって、取り敢えずそこへ出向いてみる事にした。



■ 踏切事故の多発地帯
 
 「行田市駅」とその次の「東行田駅」の間は、距離にして1キロメートル位しかなく、しかもほとんどの区間で割とカーブしている。だから電車のスピードは時速50~60キロメートルといった程度だ。
 その位のスピードではあるのだが、市街地であり、線路脇には家々が張り付いている。従って見通しが悪いのだ。その間には踏切の数が、7ヶ所かそこらもある。数が多過ぎて、電車からでは数え切れなかったのだ。
 つまり100~150メートルに一ヵ所といった割合になる。電車に乗っていて感じたのは、踏切だらけといった印象だ。
 
 実はこの同じ踏切では、昨年の9月にも男子中学生が自転車で渡ろうとして、電車と衝突事故を起こして亡くなっているという。
 自転車の男子も、踏切の手前で降りていれば事故に遭わなかったかも知れないが、もしかして一時停止もおろそかにしたのだろうか。あるいは何本かある車止め用と思われるポールに気を取られていたり、さらには音楽でも聞いていたりしようものなら、電車に気付くのは難しくなってしまうに違いない。
 その時の事故の詳細は分からないが、近くの人はそういう学生が多いので、その生徒もそういった可能性がなくはないといった様なことを話してくれた。

 
 神社の向かいにある食堂に入って新聞を開いたら、事故に関しての記事が載っていた。それによると、他の鉄道と比べて、秩父鉄道には警報機や遮断機がない踏切が多いとあった。そして、事故を防ぎたい会社側としては、踏切を廃止したい考えだというが、一方の住民サイドの中には、遠回りになるのは嫌だといった意見があって、話が先へ進まないらしい。 



■ 事故対策案

 私が今思うには、全路線を通して数の多いとされる警報機、遮断機がない踏切の中にあっても、相当距離が近いものや、かなり離れたもの、あるいは見通しの悪いカーブに何ヶ所もあったりとか、それぞれの踏切で様々に状況が違い、決して平等に総てにそれらの装置を取り付けろとか、総ての歩行者・自転車など用の踏切を廃止にしろとかの二者択一では片付けられるものではない。
 今回の事故があった踏切は例え廃止した所で、誰も異論を唱える人は出て来ないないのではなかろうかと思われる。現場の近くに踏切は多過ぎるし、電車からの見通しも悪く、総ての踏切に運転手が集中する事は難しく、それ故事故対象への発見が遅れる可能性が指摘出来るように思われるからだ。

行田市を流れる忍川に架かる秩父鉄道の鉄橋
 
 
 
 
※ 2013年1月18日 また事故は起きた。やはり行田市駅と東行田駅間の魔の事故多発地帯だった。自転車に乗った小学5年生の男子が、警報機のない踏切で事故にあって亡くなった。(更新 2013.1.23)