2010年1月17日日曜日

デフレ克服で、インフレ政策を選んで良いのか

 デフレだという。円高で、中国から安い商品が続々と入って来る。100円ショップが各地に急激に広がっている。280円牛丼や、数百円のジーンズとかが話題になっている。
 
 安い輸入品が多く入って来ると、同じ様な商品を作っている国内製の会社の商品が思うようにこれまでみたいに売れなくなって来る。そうすると製品の単価を下げて価格競争する必要に迫られる。
 その結果、効率化や合理化が一層進められるようになり、従業員の給料が下がったり、品物の受注が減れば、従業員数も減らさざるを得なくなって来る。
 そういう人達が多くなってくれば、その人達が買う品物も少なくなって来るので、他の業種にも影響が及び、景気が悪くなって来る。

 一方で円高は輸入には有利に働くので、輸入業者は利益を得やすくなり、輸入品は価格が下がる事になる。その点では消費者にとっては好ましいと言える。また国内産業においても、原料の価格が下がるためにそれを元にした製品の単価や価格を下げる事が出来るので、国内産の原料を使うのでなければその点では相殺される面もある。
 しかし、国内産の原料を使った国内で生産される純国産に近い物は、大きな影響を受ける事になると言える。

 また、輸出産業においてもグローバルな大企業にあっては、以前からその傾向があった円高の対策は取って来ているはずであって、極端な話が、日本に10の工場があって、アメリカに10の工場があれば、ドルに対する円高の場合には、それ程に影響は受けない事になる。

 しかしながら、日本国内にあった工場が外国に移転するとなると、国内で働いていた従業員は、移転に伴って外国へ行く事が出来なければ失業してしまう事になる。また親会社の工場が移転する場合には、下請けの工場も移転する必要性が出て来るので、そうした事情で国内では失業者が増え、雇用の機会が減る事になってくる。

 だから国内においては、新しい産業を生み出して雇用の場を確保し、収益を上げて行かなければならないのだが、ここが上手く行ってない。

 そこで出て来るのがインフレにしたら、上手く行くのではないかといった考え方である。金融の小手先操作だ。分かり易く簡単に言うと、カネをばら撒けという事だ。しかも、総理大臣のような金持ちがカネをばら撒くのではなく、国が印刷機で紙幣を刷ってばら撒くのである。それを市場に流して、インフレを、もっと正確に言うと、徐々に物価が上昇して行くようなインフレを起こせないものかと考え、それを実行しようとするものである。

 計画的な制御されたインフレである。そうすれば国の膨大になった借金を少しでも目減りさせる事が出来、住宅ローンなど国民の借金も軽減させる事が出来て、その分の所得に余裕が生まれた幾らかは消費に回ると考えられ、景気が上向くのではないかというのだ。

 これをどうやって実行するかというと、国が国債を発行して、銀行がその国債を買う。そうして現金を得た国は、市場に子供手当や農家への所得個別補償、あるいは高速道路の無料化へといった事によって直接に個人へとおカネを給付する。
 また日銀は、低利で金融機関におカネを貸し、市場へ流そうとするが、物を作っても中々売れないので、低利でも借りようとする人は少ないようである。さらにはおカネをもらっても、将来の不安に備えるといった考えから、貯蓄に回す人も出て来るので、思ったより効果は出て来ない。

 しかしこれをやり続けるとどうなるのかというと、国債残高はさらに膨らみ続け、市場に出回るカネがだぶつき始めて来る。そうするとただでさえ膨大な国債残高の上さらに膨らむ事になるので、国債の方が先におかしくなって来る。要するに国家の信用が失われて来るのだ。収入も無いのにお札ばかり刷っている国家を運営していると見なされるようになれば、国債の長期金利は上昇し、国債の暴落が心配されて来るのだ。つまりはこの国の国債は信用できないとなり、その結果、ついに国債は暴落してしまい、経済は混乱状態になって、国家財政は破綻の結末を迎える事になる。

 じゃあ、どうすればいいのか。収入に応じた生活をするか、売れる物を、外国に買ってもらえる商品を作るしかない。あるいはもっと外国の人に旅行に来てもらって外貨を得るか、もしくは職のない人は海外へと職場を求め、外貨を得て、日本に残っている家族とかに送金して、それぞれの生活を成り立たせて行くしか方法はない。

 しかしながら、こういう危機感をもっている人間は一部で、多くの人がのほほんとして、大地震とか、強毒性のインフルエンザとか、首都圏水浸しとか、そういった論調の中に含まれる脅かしの部類だろう位に思っているに過ぎない。これら様々な危機にも脅かしの部分はあるかも知れないが、そうでない部分もあるので、危機対策を実施する事による利害関係のないところで、危険性のレベルを検討する必要がある。

 国の借金をこれ以上増やす増やさないにしても、インフレに期待したい人間とそうでない人で意見が割れる。それぞれの立場で、自分にとって都合のいい方の政策を指示するので、公平な立場で、しがらみのない人間が判断しないと、間違いが起こり易いと言えよう。

 この国の経済や財政への国民の危機意識が薄いのは、給与が安定した公務員や政治家が国のかじ取りをしているという側面もあるのであって、そういう人に限って、まさかそんな事はないだろう、何とかなるだろうと楽観的になっている場合が多いように思えるのだが。
 自動的にかつ安定してこれまでカネが入って来ている人は、まさかある時に突然収入がストップするなんて、本気で考えはしないのではなかろうか。どうにも不思議でならない。