2009年10月3日土曜日

キューポラの街だった川口駅からバスに乗っての出来事


 駅から幾つかのバス停を過ぎて、バスはある停留所にとまった。すると運転手が身を乗り出すように扉の外の誰かと話している様で、「後ろから乗って下さい」と言ったのが、最後部の席にいたこっちにも聞こえた。

 しかし聞こえなかったみたいで、前の扉を開けて同じ主旨の事を言った。そしたら若い男がそこから中に入って来てしまった。

 運転手は尚も説明し続けていたが、男は運転手の傍で動こうとしなかった。
 あれっ、ヤバッ。ちょっと普通じゃない男が入って来たと感じ、咄嗟に逃げ道確保の必要ありと思い、窓を確認したが何処も上の空気入れの小窓以外に開く所はない。

その時はじめて逃げ道を全く閉ざされた事を実感した。

 あいつが佐世保のバスジャック犯の様に、鞄の中から牛刀でも出して来るかも知れない。あるいは大分以前になるが、新宿バス放火事件があった。火災になっても中々窓は割れないかも知れない。

 皆知らない内に、新幹線や飛行機の様になってしまっている。

 こういう事まではその時には考えなかったが、男はイヤフォンを払うように外した。何だイヤフォンしていたから聞こえなかったのか、と一安心したが、尚も理解してなげで、少し間を置いてからやっと後ろから乗った。

 乗ってからも、カードをタッチした辺りを何かが書かれているのか、何度も顔を横にして、近視の眼を細める様に見ていた。どことなく変なやつだなと思った。

 その内こっちは席を前の方に移した。そしたら彼が降りる時になって、今度はカードの残金が足りず、小銭も持っていなかった。運転手は70円足りないと言っていたが、埒が明かずに次回乗る時に今日の分を払って下さいと言った。

 男は真面目そうな受け答えをしていたので、まともじゃないかと思った。そして「次回も乗るんでしょ、その時に70円余分に払って下さい」と言われた時に、「証明は」とか質問したのが耳に入り、意外と真面目じゃないかと印象が変わった。

 という事は、彼はイヤフォンを付けていた事はいただけないが、後ろから乗るバスを本当に知らなかったのだ。バスは前から乗るものだとばかり思い込んでいたに違いない。

 都内は一律料金だから前から乗るけど、他は一律以外が多いと思うから、後ろから乗るのが普通なんだけど。