2009年10月25日日曜日

国民貯蓄が1500兆円の本当


 しばしば、我が国の財政赤字を論じる時に、例として持ち出される事が多い数字に、日本の家計の金融資産を合わた1500兆円というのがある。

 この数字が、何か国家の借金の歯止めの目安になっているかのような言い方をする経済評論家などが時々いる。そしてこう続けて言う、「国や地方の借金は900兆円を超えると言われているが、国民の貯蓄は1500兆円あるので、そこまで借金が大きくならなければ大丈夫だ」と言ったり、「国債はほとんど日本人が買っているので、仮に国債が暴落しても日本人に迷惑かけるだけで、外国人には迷惑かけないので国の信用は保たれる」と言う人もいる。
 こう言う人達の言い分の論理性や正当性はどの程度なのか、ちょっと検証してみよう。

 先ずはその1500兆円という数字の出所はと言うと、日銀が出している「資産循環統計」になる。その内訳はどんなのかと言うと、現金・預金・国債・社債・株・投信・ゴルフ会員権などになると言う。
 しかし2007年度末には1,536兆円だったものが、2009年度末には1,410兆円になってしまった。これは株価が大幅に下がった事が原因だ。
 また1500兆円の中には企業年金や国民年金の分にあたる397兆円が含まれている。これらは純粋な貯蓄とは見なさない方が良いと思われる。

 だから1410兆円から年金準備金の397兆円を引き、さらには住宅ローンの負債(民間金融機関153兆円、公的金融機関35兆円)188兆円を引く事になると、合計825兆円となる。

 「1500兆円、1500兆円」と言っていたのは、実際には825兆円だった訳だ。つまり国や地方の借金の合計は、もう国民の貯蓄の合計を超えている可能性が大なのである。   (つづく)