「龍之介君、人は例え黄金は持ってなくても、光を当てられた時に黄金のように輝くことは出来るんだよ、あのように。よーく心に刻んで置きたまえ。」
「はい、分かりました先生。」 てな会話があったかどうか知らないが。
そう言えば、さっきの寺の門前に、降りて来た坂の途中に芥川の住まいがあったと説明書きが出ていた。
芥川はこの輝きでも見て、「蜜柑」のあの場面を思い付いたのだろうか。あの小説の矛盾点は、どんよりと曇った暮方という設定なのに、何で小娘が蜜柑を投げた時だけ日の光が鮮やかに蜜柑を照らすのか、って事だ。
それに、その場面の踏切のある場所は、西側はすぐトンネルで山になっているから西日は差し込まないと思われる。
まっ、小説であって、「政治とカネの問題」じゃないから、そんな細かい所の事実関係までとやかく言う必要はないか。