景気を良くしようと国は紙幣を刷って市場へと流すが、一般の人達は中々無駄使いはしなくなっている。それではそれらの紙幣は一般じゃない人の所へ集まっていると言えるのか。
例えば、少しでも人気がある場所や土地や地域といった情報が流れると、どこに投資をしようかと狙いを定めていた資金が、どっと入りこんで来てバブルが起こり始める。
そうするとあちこちの空き地や農地にアパートが建ち、古くなった住宅が取り壊されて、マンションが建設される。それが集中的に行われるもんだから、あっという間に供給過剰になってしまい、他の地域よりも空き部屋が多くなってしまう。そういったミニバブルは、貸家以外の他の分野でも当然起こり得るのである。
一つの例として、教育の分野がある。随分と以前から、この国が近い将来は少子化社会になるという事は皆が知っていた。そうすると一人の子供に掛ける教育費が手厚くなるだろうという算段が働き、そこの分野に色んな所からの資金が入り込んでくる。その結果、全国の多くの自治体が公立なり私立の大学誘致を望み、次々と新設校が増えて行った。
(数字をあげると、平成2年に507校だった4年生大学が、それから20年弱の間に758校になった。約1.5倍である。)
そして多くの資金が投資されていった結果、それらの資金は元を取って利益を出そうとするから、一人の子供に掛かる教育費は益々家計に占める割合が大きくなり、デフレの時代が長引いているのとは逆に、そこだけインフレの道を歩んで来た。
しかし、さすがにここの時点に来て、教育費が余りに高くなり過ぎてしまったのと、不景気が忍び寄って来ている事で、人々が認識を変え始めて来ているようである。
また、子供をこれから持とうという人達も、余りの教育費の収入に占める割合の大きさに、子供を持つ事を止めようといった、一層少子化を進めて行ってしまう様な傾向が生まれて来ている。
ある調査によれば、子供を持ちたい数は2.5人なのに、実際には1.3人というのが現状といった結果があり、その理由が「教育費が高いから」という事のようである。
まさに高くなり過ぎてしまった家計における教育費の比重が、業界にもそして社会にも深刻なダメージを与え兼ねない結果をもたらそうとしている。
以上の様な例に出した分野にばかりではなく、これからもこうした不景気の中にあってのダブついたカネ余りの状態は、日銀が紙幣を市場にどんどん発行すればするほど、ある期待が見込まれそうな場所や分野で容易にバブルを引き起こし得ると言えよう。
このように時として行き過ぎた投資は社会や企業に悪影響を及ぼすような事が起こり得る。それ故、節度のある金融システムを構築して、社会の安定化をもたらし得るような仕組みを作って行って欲しいものである。
新聞報道によれば、4年生私立大学を経営する学校法人の44.3%が2008年度決算で赤字だった事が、日本私立学校振興・共済事業団のまとめで分かったという。
また文科省によると、平成15~20年度に新設された学部のうちの380学部を調査した所、約四分の一の100学部で学生数の過不足やカリキュラムの変更など、当初の計画通りに運営されていない事が分かったという。