2009年9月12日土曜日

雨水桝にポイと捨てられた煙草の吸い差しの行方(「ふれあい下水道館」小平市)

 道路の脇の排水溝に雨水桝があって、その蓋に細長い穴が3本くらい開いている。良く見るやつだ。そこに煙草の吸いかけを投げ入れたりした事はないだろうか。
 我々の流した排水や雨水がどうなっているのかを、東京都小平市にある「ふれあい下水道館」へ行って調べてみようと思った。

 駅から津田塾大学を目指してぶらぶらと歩いたら、玉川上水に来た。近くに橋があって、鎌倉橋という名前だった。「この辺かぁ、鎌倉街道が通っていたのは」と一瞬、鎌倉時代の武士団が頭の隅をよぎった。そばに標柱があって、そこの地図に下水道館が出ていたので道順が決まった。東京にはあちこちに地図があるので、結構便利だ。
 「ふれあい下水道館」は地下5階の構造で、最下層の地下25mにある本管の中に入れるようになっている。分厚い頑丈そうな扉を通って本管の中に入ると、生ぬるい湿気を含んだ空気に覆われ、僅かに匂いはあるものの、思ったほどではない。管の大きさは地下鉄も通れる位なほどで、水量は少なかった。頭の上のライトには小蠅のような虫が集まっていた。
 東京都は合流方式なので、汚水も雨水も一緒になって下水処理場へと運ばれる。処理方法としては、薬品で沈殿させたり、微生物の分解で汚れを取り除き、塩素殺菌して川や海に放流する。浄水場も似たような仕組みになっている。
 ちょっと待って、質問がある。バイ菌は塩素消毒で大丈夫なようですが、あの排水溝に捨てた煙草の吸い掛けですよね、ニコチンやタールはどの過程で処理するんですか。残念ながら処理されず、薄められたまま、下水処理場を通過し、浄水場も通り抜け、家庭の蛇口まで来てしまうという事のようだ。
 雨水桝に煙草の吸い掛けをポンと投げ入れた人は、まさか自分が飲む水道の蛇口から、ニコチンとタール入りの薄まった水が出て来ているとは思いもしないに違いない。
 山からの水を引いて生活用水としている地域では、上流の人は下流の人たちが使う事を考えて、汚さないように気を付けながら使っている。それが都会では複雑な仕組みになって、人々に分かり難くなってしまっていてその事が無責任な行動と結び付いたりはしていないだろうか。今一度考えてみる必要がありそうだと思った。