2009年12月18日金曜日

神の手(カウンターパンチの天才、長谷川)

 「神の手」、何年か前にそんな言葉がマスコミを賑わせたが、こちらの「神の手」はインチキではなく本物である。

 マスコミが1ラウンド3連続KOを煽ったせいでか、チャンピオンの長谷川の最初は力んで、大振りなパンチが目立ち、加えて挑戦者の大きな右パンチが見えなかったようで、何度か当たっていた。

 彼自身のボクシングになっていないので、今日は良くないのかなと思った。しかし徐々に相手のパンチも見えて来て、自分のスタイルも戻って来たので、やっと安心できるかなと思った4回だったっけか、最後はあっ気ない幕切れだった。

 相手が多少行けると思って、前に出て攻撃を仕掛けて来た。そこを得意の左ストレートのカウンターが見事にとらえた。相手はまだ反撃する力があったのか、反撃しなければならないと思ったのか前に出て来た。そこを間一髪を入れずに左のショートストレートが試合の引導を渡すかのように右の顎に決まった。

 この最後のパンチは神業である。勿論相手にも見えてなければ、観客にもテレビの視聴者にも見えない、とても人間業とは思えない様な神がかりなパンチであった。

 スローのビデオで見てやっとこさ分かる位なのだ。あんなパンチは僕もずいぶんボクシングを見て来たけれど今まで見た事がない。

 もしかして行けるんじゃないか、そう挑戦者が思った瞬間に油断が生じ、セコンドが「もっと慎重に攻撃しろ」、といったアドバイスを忘れ、誘われるように前に出て行ってしまった。
 
 それが、飛んで火に入る夏の虫になってしまった。挑戦者はその時は何が何だか分からなかったと思うが、後になってカウンターの天才を思い知るに違いない。


 もし彼に勝つとしたら、神の手を封印させ、それが出る前に倒してしまうしかないのではないかと思う。

 それにしても最後のあの一発は、単にスポーツ域を通り越して、芸術的な見事さと驚きを感じてしまう。